こんにちは、内科医のトワです。
今回はなぜ尿に糖が出るのかについて解説します。
予備知識として、これまでの記事を読んでいない方は是非こちらもお読みください↓


腎臓の仕組み・はたらき
糖尿病とはその名の通り「尿」に「糖」が出ます(=尿糖)。
結論から言うと、
尿に糖が出る原因は、血糖値が一定以上に高くなったせいです。
正常なヒトでは尿に糖は漏れてきません。
ここら辺のメカニズムを知るために、尿を作っている「腎臓」という臓器について知っておきましょう!

腎臓は肋骨より少し下、背中の真ん中くらいの高さで、左右に1個ずつあるソラマメのような形をした臓器です。
血液から尿を作って膀胱に送る仕事をしています。
腎臓の使命は、大事なものは外に出さず、不要になったものを外に出すことです。
血液をそのまま外に出すと必要なものも全部一緒に漏れてしまいます。
そのため、腎臓には「大事なものまで尿として出て行かないようにする仕組み」が大きく2つ備わっています。
その1:濾過(ろか)
尿を作る第一段階です。
細い網目に血液を通して、大きな物質が尿に漏れないようにすることを「濾過(ろか)」と言います。
コーヒーを淹れる時にも似たようなことをしますよね?

血液の中には、身体の維持のために働く様々なタンパクが流れています。
他にも、酸素を運ぶための赤血球や、異物を排除するための白血球などの細胞も流れています。
こうした漏れてほしくない重要な物質は、まずこの網目(=「糸球体(しきゅうたい)」といいます)を通過できないので普通は尿に出てきません。
さて、肝心のブドウ糖は、というと…
実はブドウ糖、この段階では網目に引っかからずに漏れていきます。。。
しかし、ブドウ糖も本来ヒトにとって重要なエネルギー源ですから、
この次の段階で、そのまま尿に出て行かないようになっています。
その2:再吸収
ブドウ糖のように、小さな物質でも身体にとって重要なものはたくさんあります。
そのため、糸球体を通過してきた物質でも重要なものは、血管の中に再び吸収されるシステムが存在します。
これを「再吸収」といいます。そのまんまですね。

ブドウ糖はほぼ100%が再吸収されるため、通常は尿に出てこないのです。
尿糖が出てしまうワケ
ここまで来ると、勘のいい方は「なぜ尿糖が出るか」もうお分かりでしょう。
ヒトがブドウ糖を再吸収できる量には限界があります。
血糖値が高くなってくると、その限界を超えた量のブドウ糖が糸球体を通過してくるため、再吸収が追いつかなくなって尿糖が出るようになるのです。

血糖値がどれくらいまで上がると尿糖が出るかは、個人差があります。
中には、稀ですが正常の血糖値でも尿糖が出る「腎性糖尿」という体質の方もいます。
尿糖が出たとしても、血糖値が正常で腎性糖尿の診断となった場合は治療は不要です。
尿に糖が出ることが問題ではなく、血糖値が高いことが本質的な問題だからです。
まとめ
まとめです。
腎臓には、大事なものまで尿に変えて体外に出さないために、
- 糸球体での濾過(ろか)
- 糸球体を通過した後の再吸収
の2つの仕組みがあります。
ブドウ糖は、一旦糸球体を通過してしまうものの、普通はその後で100%再吸収されます。
血糖値が高いと大量のブドウ糖が糸球体を超えてくるため、再吸収の限界を超えてしまい、尿に糖が出てしまいます。
こうなると尿検査で引っかかるわけです。
また、尿に糖が出る閾値は個人差があるため、
尿に糖が出ているからといって必ずしもイコール糖尿病というわけではないことも説明しました(腎性糖尿)。
さらに言えば、糖尿病の方でも血糖値があまり高くない時間帯には尿に糖が出ていないことになります。
いかがだったでしょうか。
尿に糖が出てしまうことで起こってくる症状もあります。
症状についてはまた次回にでも記事にする予定です!
当サイトでは、今後も糖尿病をはじめとした生活習慣病に関する知識を随時更新していく予定です。
更新はTwitterでもお知らせします。
お気軽にフォローしてくださいね!